読み物
最終更新日:2022年2月22日
絵・写真・文:いろや商店の編集室
れんさいプロジェクト:旅する自由研究ノート
東京にある世界文化遺産!ル・コルビュジエ設計「国立西洋美術館」で学ぶ美しい西洋芸術
新世界!美しい西洋芸術を楽しむ、東京上野にある国立西洋美術館
「美術館」へ行ったことありますか?
「西洋の芸術作品」をみたことありますか?
「建築物」に興味を持ったことありますか?
次の旅の目的地をどこにしようかなぁ...と、ボーッとしながら歩いていると、目の前に現れたのは「考える人」。せっかくなので、ここで出会った「考える人」と今後のことを一緒に考えることにしました。近くにあった「地獄の門」は、私にとって地獄への入り口となるのかはまだわかりません。でも、門を開けて、その先にある新しい世界へ飛び込むというのは旅への第一歩です。そんなわけで今回の旅する自由研究ノートは、ふと立ち寄ったル・コルビュジエ(シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ)設計の「国立西洋美術館」を取り上げることにしました。東京の都内に住んでいれば身近で、仕事帰りにいつでも行くことのできる世界文化遺産です。
小学校の低学年以下のこどもを連れて行くのはあまりおすすめできないけれど、小学校も中学年から高学年に入った子なら、目の前に現れる本物の芸術から、何らかのメッセージを受け取ることでしょう。その感想を聞きながら帰れば、大人にとっても新しい学びを得る貴重なきっかけとなります。ここでは、”時代”を感じさせない美しさに触れられる、時間が止まるような貴重な時間を過ごすことができます。
いろや商店の店長のおおま(@iroyaonline)です。
ご覧いただきましてありがとうございます。
育児・子育て苦手な店長が、こどもが主役で書いてますのでゆっくりご覧くださいませ〜。
国立西洋美術館で出会う「考える人」
先日、仕事の予定があり上野を目指すことになりました。
そうだ!ル・コルビュジエ(シャルル=エドゥアール・ジャンヌレ)設計の「国立西洋美術館」へ行こう。と、予定を早めに切り上げて向かうことにしました。
「国立西洋美術館」は、東京の上野駅(公園口出口)を出て、信号を渡るとすぐ目の前にみえます。上野駅の構内で迷うことなく「公園出口」を目指すことができれば、まず迷うことなく目的地となる「国立西洋美術館」へは到着できることでしょう。繰り返しますが「公園出口」です!
「国立西洋美術館」の正面入り口から入ると、目の前に彫刻が現れてきます。
彫刻群を無視して、まっすぐ正面から建物入り口に向かって進むこともできます。館内へ入る前に、ぐるりと回ってみるか、館内で絵画や彫刻を鑑賞した後に、ゆっくり回ってみるかはそれぞれの自由です。ところどころに座れる場所もあるので、ゆっくり落ち着いて考え事をしたい時にもいいかもしれません。一緒に「考える人」が何かアイデアをくれるような予感をさせてくれます。
ということでわたしは「考える人(オーギュスト・ロダン)」の銅像の前で、一緒に今後のことを考えることにしました。他にも、「カレーの市民(オーギュスト・ロダン)」決して、さっき行ったお店のカレーライスが辛い!と手を上げてるわけではありません。「アダム(オーギュスト・ロダン)」と「エヴァ(オーギュスト・ロダン)」が囲む形で「地獄の門(オーギュスト・ロダン)」があります。
近寄ってみることができるので、繊細な線のタッチ、特に「地獄の門」については、細かく描かれている像群をじっくり観察することができるので、スケッチをして1日いても良いです。ちなみに「考える人」は、この「地獄の門」の中に描かれた像群の一部が独立したものです。
どこにあるか、実際にみて確かめてみてくださいませ。
ダンテの「新曲」にある一文「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」
これが私へのメッセージでした。なるほど、一切の希望を捨てて門をくぐろうと、そう誓った旅の最初の一歩です。
旅というと、なんだか夢や希望に満ち溢れたイメージですが、それらを全て打ち砕く一言でした。「希望を捨てよ」これから長く続く旅は、希望のないものになりそうです。ちなみに、この「地獄の門」は世界で7つ存在するそうです。これから世界を回る中でこの門にいくつ出会うことができるか、新しい楽しみのが一つできました。
最後に忘れてはいけません、「弓をひくヘラクレス(エミール・アントワーヌ・ブールデル)」。
今にも動き出しそうな、迫力ある彫刻も圧巻です。角度によって、さまざまな見え方がします。正面に立って放たれた矢を受けるでもよし。横にいて応援するもよし。隅々まで観察してスケッチをすれば、人の体の動きを学ぶことができることでしょう。ちなみに、実際に矢を放とうとしたのは、第6の試練・ステュムファリデスの鳥へ向けてです。
贅沢に味わう、国立西洋美術館の常設展と企画展
「国立西洋美術館」では、常設展と企画展に分かれて展示物が構成されています。
企画展は、企画が開催されている期間にしかみることのできない貴重な展示物をみることができます。「国立西洋美術館」へ所蔵されているものから、他国の美術館・個人などの所蔵している作品まで、まとめて一度にみることができます。その年にちなんだ企画が行われることが多く、開催期間の長いものが多いので、1年に数回足を運べばその年に話題となっている芸術に触れることができます。
常設展は「松方コレクション」を中心に西洋の美術品が専門に展示されています。
ゆったりとしたスペースで、14世紀から20世紀にかけての様々な絵画・彫刻をみることができます。企画展の場合は、混雑具合では押し合いへし合いという感じで、ゆっくりみようと思うと人の流れに寄り切られ…。ということもありますが、常設展の場合はそんなことありません。ゆっくりと納得のいくまで筆の動き、色の変化を楽しむことができます。
主に絵画が中心に展示されています。西洋絵画の技術を学びたい!と考えたら企画展より常設展で腰を下ろしてずっと眺めている方が良いと思います。時間があればスケッチをしたのですが、今回は時間の関係でスケッチなしです。
14世紀の頃へさかのればさかのぼるほど、宗教色の強い絵画が多く、力強さや優雅さ、絵画全体から出る強いメッセージ性に圧倒されます。絵画の描かれた目的、パトロンの考え方など色々な角度で深く楽しめます。19世紀以降は、植物画なども登場して荒々しいというよりもどこか穏やかで、自然の美しさが感じられる作品も多くなります。行ったり来たり、常設展では時代の流れも感じながら芸術作品を楽しむことができます。
そんなわけで、なんだかんだで数時間は常設展にいました。
その時々の自分の置かれた状況や年齢などによって、楽しみ方が変わってきます。それらを楽しむのもいいですね。
近代建築の美しさ!ル・コルビュジエの建築思想を感じながら
3大陸にまたがった登録は史上初!世界7カ国にまたがり、17資産で構成される「ル・コルビュジエの建築作品”近代建築運動への顕著な貢献”」の一部として、「国立西洋美術館」は世界遺産へ登録されました。
17資産の中に含まれるスイスの建築物「レマン湖畔の小さな家(ヴィラ・ル・ラク)」は、両親のために建てた家。
最小限住宅という新しい建築的表現を示した店長も好きな建築物です。色と色の区切りが一つの空間の間切のような役割をしていて、小さくすっきりとして美しく、この建物を参考にマイホームの設計をされる人もいるくらいです。今度行った時に写真を撮ってきます。他にも、現在の住宅・商業施設などへの建築方法・材料など技術的なモデルとなる建物を世界中で設計しています。
- ピロティ:人も風も自由に行き来できる空間
- 屋上庭園:水平な屋根の上に植物を植える屋上空間
- 自由な間取り:柱で床を支えることによる間仕切りを自由に変えられる空間づくりの仕組み
- 横長の窓:隅々まで均一な光を取り込む空間づくりの仕組み
- 自由な立面:柱で支えることによるパネルやガラスで自由に壁面をデザインできる仕組み
これらの5つ<ピロティ・屋上庭園・自由な間取り・横長の窓・自由な立面>が近代建築の要素と言われ「国立西洋美術館」はこれらが具体的に表現されています。
今や様々な建築物で、これらの条件が満たされた建築物を目にすることは多いです。
「国立西洋美術館」では、これら近代建築の5つの要素を建物の中に入って体験することができます。
常設展の中に入ると特徴的なホールに入ります。「19世紀ホール」と名付けられ、美術館の中心に置かれています。建物の真ん中にあるとは思えない、自然光での明るさ。それらを取り入れるための特徴的な三角形の窓の空間(トップライト)を用い、自然光で展示物を見れるように工夫されています。
ここから、美術館に入った!という、シーンとした静まりが包みます。
美術館ならではの静寂を作り出す空間になっているんだと感じます。そこから今では様々な建築物で取り入れられ、当たり前になってきたスロープ(斜路)があり、展示室へとつながります。展示室はホールを取り囲むようにあります。高低差を少し感じながら、足元の不安定さを感じることなく、全体的にフラットでどこまでも続いていくような印象を受けます。
2019年は「国立西洋美術館開館60周年記念」として、「ル・コルビュジエの設計した建物」の中に「ル・コルビュジエの資料が並ぶ」企画展が開催される予定です。
「建築物」に興味を持つとても良い機会になります。
さすがは世界文化遺産!西洋芸術に没入できる静かな環境
展示室を歩くと、中庭の自然光が飛び込んできます。
19世紀ホールに入ってから続く、静寂な時間の流れは奥へ進んでも続きます。作品以上に主張しないように空間が作られ、目の前にある作品に集中というよりも、没入することができます。絵の具の厚さや、色の重なりの深さ、線の細さ・太さと、それぞれの筆のラインにどのような想いをめぐらせ、この作品を描いたのか、いろいろな想像をたのしみながら、目の前にある芸術作品を楽しむことができるのは、とても贅沢な時間です。
ホールをぐるりと囲んでできた空間は、建物の複雑さを感じさせることなく、年代を追いながら作品を見ていくことができます。
作品が展示されているスペースには、あまり窓は多くありません。
できる限り外の景色が絵画の邪魔をしないように考えられています。それは、外の世界から離れ、目の前に広がる芸術作品と1対1で会話することのできる貴重な空間にもなります。
ル・コルビュジエの設計した建築物には、どれも独特の静けさがあります。空間が統一され、一定の間隔・広さがあり、吹き抜ける風や人・物が一箇所にとどまらないような、フラットな空間が特徴です。この統一化やリズムは「モデュロール」と言われるル・コルビュジエが考案した尺度から生み出されています。空間を楽しみ、ほど良い間隔で絵画や芸術作品が配置するだけで、美しい室内が出来上がるのは「最小限住宅」と呼ばれる所以かもしれません。
フランスでの作品が多いル・コルビュジエの設計した建築物は、日本以外にも世界中にあります。旅をしていく中で立ち寄りたい場所の一つです。旅行先・旅先で見つけたら、是非寄ってみてください。
店長もこれから回るたびに少しずつご紹介していければと考えてます。
目の前の西洋芸術を感じて広がる新しい発想
日本にいながら、西洋の文化・歴史・芸術に触れられる場所は多くありません。
インターネットが普及し、さまざまな情報に触れられるようにはなりましたが、芸術作品は画面上でみるのと、本物を目の前にするのとでは大きく違います。紙以上に、機器によって色の変化が激しい”ディスプレイ越しでの閲覧”は、本物とは印象が変わります。
美術館にわざわざ足を運ぶのは面倒臭いかもしれないけれど、自分の目で芸術作品を目にすることは、便利になった時代だからこそ大切にしたい体験です。こどもと一緒に本物を体験するために、足を運んで欲しいなと思っています。
美術館に来た時の独特の静寂感は、なかなか普段では味わうことがでいない静寂です。自然の中や密室・イヤホンなどとはまた違った静寂で、日々の忙しさや、考え事などで混乱した時に、ポッカリと空いた時間をつくってくれるような場所だと感じています。なので、少し考え事をしたいな…というときに、ちょっと贅沢だけど、美術館へ行って腰を下ろして考え事をする。というのは、店長がおすすめしたい美術館の楽しみ方の一つです。(店長はそうしてます。)絵画を見にいくだけが、美術館の楽しみ方ではないので、それぞれ個人で美術館や建築物の空間を楽しむのがよろしいかと思います。
西洋の芸術に触れることで感じた率直な感想は、出会った後の自身の世界を大きく変えてくれるものになるでしょう。
ということで、少しだけ立ち寄る予定がなんだかんだで5時間くらいいました。もっと時間があれば、朝から夕方までゆっくりと過ごすことができると思います。でも、お昼のランチのレストランは混み合って大行列です。こればっかりは悩ましいところですね。帰りにまた、「考える人」に挨拶をして帰りました。
個人的にどうしようかな…と考えていた「旅」についても「一切の希望を捨てよ」という答えが出ましたし。なんとなく、すっきりとした気持ちでこれからの新しい世界に向けて歩き出せたような気がします。「国立西洋美術館」は、東京都内からなら世界イチ近い世界文化遺産です。一度も行ったことがなければ、一度は足を運ぶのをお勧めいたします。