

最終更新日:2019年1月19日
戸田デザイン研究室(戸田やすし・大澤千早) × いろや商店の店長
雑談・インタビュー:絵本・おもちゃ・雑貨の生まれる場所
父と一緒に会社を、表紙に絵がないと売れないよ。戸田デザイン研究室を訪ねて(2)
前回のインタビューから少しお話も長くなり、戸田デザイン研究室のスタートから、大切にしているデザインのお話を聞くことができました。
知らなかった事が次から次へと飛び出てきて、ロングセラーの続く、おもちゃ・絵本がどのようにして生まれるのか、そのこだわりやデザインの考え方を今回のインタビューから垣間見ることができています。
転向
戸田:
出版業って新しいものをどんどん、どんどんつくって次の企画を決めての繰り返しで、どうかなと思いながらも、その業界の中でしっかりやってたんです。
店長:
こどもに関してではなかったんですか?
戸田:
はい、文芸誌の会社だったのでまったく関係なかったです。
一方で父は、本を1つ2つ、3つと出し始めた頃で…。
店長:
その頃お父さんはだいたい何歳頃だったんですか?
戸田:
52歳からはじめて、そこから1年に1作のペースなので、50代後半…ですね。
店長:
デザイナーの仕事はそこで閉じたんですか?
戸田:
そのへんで「転向」ということで、本人的には言ってましたけどね。
当初は本も描きながらでやってたんですけれども「あいうえおえほん」を出して、次は「竜(りゅう)のはなし」という、これまたとっても売れなかった本を出したんですが…。
(一同、笑。)
戸田:
その頃には、ほとんどやめてましたね。

今でも変わらない、消費サイクルに巻き込まれない作品づくり
戸田:
そして何年か経ってから、私と一緒に戸田デザイン研究室として、独立した会社としてやっていこうということになったんです。スタートからそういうことでしたので、ひとつの本をていねいに作って、出版業界のサイクルに巻き込まれないで独立して作りたいものを作るっていうのは、はじめからそれありきではじめた会社だったですよね。
なので今もそこは変わらないんですけれども、経済の消費のサイクルとかに巻き込まれないようにしながらも、自分たちの作りたいものを作っていくというのはそこからずっと繋がってる考えです。
店長:
ずーーっとペースは変わらないで。
これからも変わらないでやっていくという。
戸田・大澤:
そうですね、はい。
戸田:
そこがないと。
何か売上を上げるためにこれを出さなくてはとなってしまうと。
ちょっとそもそもの本末が転倒してくるというか…。こういうものが今世の中にないので自分たちでつくりたいとか、そこをベースに仕事をしていくということが一番だと思っています。今ちょっと変わってきたのは、当初はこどもの本ということに限定していたんですけれども、立体的な玩具や、大人・こどもに関わらず、うちの持っているデザインで、それを手にした人がワクワクしたり、少しオーバーにいうとその人の人生が豊かになるような仕事をしていくというところへ少しずつ変わってきているところです。
店長:
デザインをする上でのルールみたいなものはあるんですか?
大澤:
私たちはそこまで、ルールと感じてなかったと思うんですけれども強い根っこはあると思います。
過去の作品から時系列に並べた時に貫かれているものはどうしてもあると思います。
戸田:
デザインから入ったという部分が大きくて。
父の描きたい絵があって、それを使って本にしてと考えた時に「あいうえおえほん」だったということなんですけれども。
ずっと遡って僕がこどもの頃に、うちはそんなに本がたくさんある家では無かったんですけれども、たまに買ってくるのが父だったんです。
その時に、自分が買いたいものがあまりなかったみたいなんですね。こういうのがあったらあの時自分は買ってたのにな。というのがベースにあって、自分が作る本のリストに入ってきていたとおもうんですよね。
ジャンルでいうとうちも色々あって、名作みたいな本も出していて、知育絵本・創作絵本などもそろってはいるんですけれども、手に取りやすい知育絵本が最も、注目されてますね。
店長:
もともと、知育玩具というのを作ろうと思ったわけではないんですね。
戸田:
そうですね。
大澤:
こどもに何かを伝えたいと思うと、そうなりますね。
「あいうえおつみき」も、そのDNAはバッチリ受け継いでいて、デザイン的にも綺麗で、長く使えるもので、こどもたちのイマジネーションが広がるものが「世の中に無い、だったら作りたい!」と思って作ってしまってます。
(一同、笑。)
戸田:
こどもを喜ばせようとか、こどもまで大人が降りて行って、ものづくりをするというものも世の中のバリエーションとしてはあっていいとは思うんだけれども、大人の目線で大人がしっかり作って、大人の価値観を全部詰め込んで作ったものを見せても、そこにこどもは反応してくれるんです。
なので、「こども用に」とかではなくて、そこには大人も、こどももないんじゃないかという作り方をしてくのは、うちの特徴じゃないかと思っています。
大澤:
こどもだからといって、わからないことはないだろうと。
こどもが作ったものでも「オッ、すごいな。」と、大人がびっくりすることもたくさんあるんですよね。

表紙に絵がないと売れない
戸田:
「あいうえおえほん」を出版した当時、「こどもの本なのに表紙に絵がないのは売れない。」と言われて、そこをなおしたら売ってやると、あちこちから言われたらしいんです。
でも父にしてみると、自分のデザインというか、美に対する意見をここにまとめて作ったつもりなので、ここに絵を入れるとかはありえなくて、結局そういうところとはお取引の話は成立しないんですけれども、一時はそういうことがひんぱんにありました。
それでもそこは、うちはうちの考えでやらせてもらうというところは、はじめからあったようですね。
戸田:
名作シリーズがあるんですけれども、重いし暗いしで…。(笑)
こども用の本なので、もっとメルヘンチックにあかるい感じでに描きなよって言われたらしいんだけども、でも、この話にはこの絵しかないと思っていて、それを子供が見るので色をあかるくしたり、お話を楽しくしたりというのは、長い目で見ると違うなと思っていて、それよりも、作り手がこの文を読んで本当にこう思ったんだという絵を描いて、それをこどもにみてもらう。というつもりでつくられています。
戸田:
父はデザインとかは独学なんですよ。
農業学校に行って、そこで「宮沢賢治」を知って、そこからこの本は読んでいてということだったらしいですけれども。
大澤:
自然の色にとてもこだわっていますね。
戸田:
本も原文のまま使っているので、こどもはこれが全部理解できるのかと思われるんですけれども、これも、こどもがこの本を読んで、全部理解しなくてもいいと思ってるんですね。なんか、こどもの頃に気味悪くて、暗い本を読んだんだけど…。(笑)竜の剥がれた姿がすごく印象に残っていて…と。改めて大人になって見た時に、その人の人生に何かプラスに関わってくれば、それが本の関わり方としていんじゃないかと、そのくらいの感じで考えていたみたいです。
店長:
絵本としては、衝撃的な絵が多いですよね。
大澤:
そうですね〜、剥がれちゃったり。
(一同、笑。)
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