読み物
最終更新日:2020年6月2日
絵・写真・文:いろや商店の編集室
れんさいプロジェクト:いろやのこと
仕事大好きパパ、はじめての子育てに挫折。逃げ出したい毎日が続く・・・
こんにちは。いろや商店の店長のおおま(@iroyaonline)です。
ここ「いろやのこと」では、まったりマイペースにいろやのあらゆる側面のおはなしをお伝えしています。
前回は、こどもが生まれる前の店長の日々の暮らしを書きました。
いわゆるワーカーホリック(仕事中毒)のような状態が続いていた「こどもが生まれる前の店長」ですが、ちょうど30歳の時に人生の転機がおとずれまして、こどもが生まれました。フリーランスとして「仕事が主役」でここまで来た店長に訪れたのは、仕事をしている時間のない日々です。家事に追われ主夫に近い生活。24時間こどものことで過ぎ去っていく現実と向き合いながら、お金は出て行くばかり。新しい暮らし方を模索することになります。今回は「仕事が主役」の店長にとって「こどもが主役」になる大きな転機となった、こどもが生まれた後の暮らしを書いています。男(パパ)目線でのこどもが生まれる前と後の変化についても少し知ることができると思いますので、何かしら・誰かしらの参考になれば幸いです。
いろや商店の店長のおおま(@iroyaonline)です。
ご覧いただきましてありがとうございます。
育児・子育て苦手な店長が、こどもが主役で書いてますのでゆっくりご覧くださいませ〜。
主夫!?仕事大好き新米パパの子育てがスタート
さぁ、右も左もわからないパパの”子育ての毎日”がついにキックオフです。
パパなりに、少しは奥さんにゆっくり寝てもらいたいとちょっと張り切った店長は、粉ミルクを使った調乳を織り交ぜる努力をすることにしました。もともと出産準備用品と書かれたリストそのままに子育てグッズを全て揃えたので、調乳セットも見事に揃ってます。
準備も万端、授乳機会の1/3を調乳にすればいくらか深夜帯の生活は楽になるんじゃないかと…。しかし、そんな淡い期待は見事に裏切られます!息子は調乳をまったく受け付けず、哺乳瓶を口に近づけても口を一向に開きません…。ツンツンと、哺乳瓶の乳首を口に当てるけど、まったく飲む気配なし。というよりも頑なに口を開きません。哺乳瓶の乳首の部分がダメだったのかと思い、その後色々と変えてみたけどダメ。ミルクの味がダメなのかと思い、メーカーを変えたりしながら試してみたけれども一切飲みません。パパが抱っこするからなのかな?と、なぜかママが抱っこして調乳で試したけどダメ。(これで飲んだとしてもこれだと、何も意味がないのよ!)
ということで結局、粉ミルクを使った調乳での授乳へのチャレンジは失敗に終わり、息子は100%母乳で育ちました。
少しでも奥さんの負担を軽くしようと、他にできることを探すのですが、新生児期の頃は、パパにできることは多くありません。
わかりやすくパパに出来ることと言えば「オムツ交換と、お風呂」くらいです。
たぶん、どこの家のパパもこの2つを任せられることが多いことでしょう。新米パパとなった店長も与えられた大切な役目と思って頑張りました。我が家の息子は真夏に生まれたので、お風呂も1日に数回入りました。
ちなみに、お風呂のタイミングは、パパ側で調整できるので良いのですが、大変なのはオムツ交換です。オムツの交換タイミングは夜中も含めていつ来るのかわかりません。いつ来るかわからないその時のために、いつでも行けるようにスタンバイしておくのは結構大変です。正直なところ心が折れることもたくさんありました。
出産後赤ちゃんが家へ来ると、奥さんに頭が上がらなくなります。(もちろん、今も。きっとこれからも。)
パパに出来る赤ちゃんへのこともほとんど見当たらないので、少しでも家のことで役に立てるならと家事をすべきか仕事に振り切るかを考えました。
以前のように、仕事100%という選択の仕方もありましたが、それは身近に手伝ってくれる人がいたり、家のことが問題なくまわる環境や手助けがある前提と思ってます。
ベビーシッターや、お手伝いのお願いをできる人が周りにまったくいなかった私たち夫婦の場合、仕事に対して全力投球をしてしまうと、子育ては破綻するだろうことは明白でした。そのようなわけでこの時、男性にとって家事は必須スキルだなと実感することになります。
この時の経験から、息子は小さい頃からままごとで遊び、料理をすることにも触れさせています。
女性は出産・授乳の時、家事をすることが難しくなります。
向き不向きはあるけれども、そんな時にパパが当たり前に家事ができると何かと生活が楽です。
家事ができるのは、男性にとって自分のしたいことをするためにも必要なスキルだなと今も感じてます。
そんなわけで新米パパの店長は、初めての子育てと張り切ったは良いけれど、突きつけられた現実に挫折する毎日でした。
ママは一日中赤ちゃんといることが多く、母乳でもあったため、絶対に離れられない日々が延々と続きます。常にこどもと一緒で大丈夫!という人もいると思うけれども、自分だったらできるかな…?と思うことが多かったです。店長は育児が苦手だなぁとこの頃とても感じてました。
ということで、初めてのパパの子育て『よくできたか?』と聞かれたら『できませんでした!』とハッキリおこたえできます。(苦笑)
布おむつに挑戦、挫折・・・
新米パパにできることと言ったら「オムツ交換と仕事と家事」な店長。
いつ来るかわからないオムツ交換の体制を取りつつ、朝・昼・晩と、家事をこなします…。そう、仕事の時間はもちろん、自分の時間を作るのがとっても難しいという現実に直面します。時間が空いた!と思えば、オムツの交換。終わったと思えば、買い物の時間。合間にメールを確認して返信、ちょっと細かい作業を…と、気づけば日は暮れ、外は真っ暗な夜。
でも、フラフラになりながら授乳している奥さんの姿を見ると、弱音は吐けないなと思うのです。
ちなみにこの時「布オムツ」にチャレンジをしてました。
流行りはじめる少し前、自分が小さい頃はそう言えば布オムツだったなと、そんな話を夫婦でしていまして、布オムツなら、洗って再利用ができるし、毎日どんどん出るオムツのゴミの量を考えると、自然にも優しくてエコだねと。そんな考えから、奥さんはこどもを出産する直前まで布オムツを縫って準備してました。ガタガタガタ〜っと、ミシンの音が連日家の中で鳴り響いていました。
しかしながら、この「布オムツ」が家事をさらに過酷にします。
「紙オムツ」の場合、どこへ行ってもそのままクルッと丸めて設置されているオムツ用ゴミ箱へ入れれば、オムツ交換は終わるんだけど、「布オムツ」の場合はそうはいきません。外出した時も、家にいる時も、オムツを交換した後の排泄物の処理と、布の洗濯を迅速におこなわないと大変なことになります。ホクホクの状態の布オムツに転がっているうんちを流すために、トイレに走りたい!でも、赤ちゃん一人その場に置いておくことはできない。という、外出時は布オムツなりの苦労を味わうことになります。なんといっても時期は真夏!外出先で交換した後の布オムツ数枚をもって歩く大変さ、電車での移動、それらを持ち帰った後の家ですることの家事の増加。夢に描いた100%布オムツでスタートしたオムツ交換ですが、紙オムツと布オムツの比率は、50%へと変わり、最終的には紙オムツに変わることとなります。頼れるものはなんでも頼ろうと、申し訳ないとは思いつつも、紙オムツにはとても助けられました。
この後にも書くのですが、過酷な日々の中で、家事負担が増えていくと精神的にこたえます。家事負担を少しでも減らすというのが、何よりも優先度が高いということを実感しました。
そんなわけで、オムツ交換とお風呂のペースをつかみ始めた店長ですが、家事の量が減るわけではありません。これらに加えて、家の掃除・朝昼晩の支度に加えて、仕事があります。宅配にできるのは宅配にしと、この頃少しずつスタートしはじめたネット宅配もすぐに利用しました。八百屋に行ったりしての買い物が楽しかった私たちにとって、ネット宅配は、この忙しい時期だけの利用になりましたが、定期的に家に食材が届くだけで、助けられたものです。
これを書かないわけにはいきません。家が広いと子育て時の移動が増え、家事の時間が増えます。
こどもが生まれる頃に二人で住んでた家は、庭付きの一軒家(4DK)でした。
何を思ったのか、庭で畑をしよう・・実のつく木のある庭付きの家に住んでみたい。事務所も兼ねているから、それぞれの生活空間を分けられる少し広めの家にしようと、駅から歩いて数分の場所に借りた、たいそう広い家でした。広い家から出てくるのが若い夫婦なので、周りからとても不審がられたのを今でも覚えています。(裏のおばあちゃんは仲良くしてくれました。)
これがまた、家事を過酷にします。庭にしろ部屋にしろ、広いと掃除などにとても時間がかかります。あまり使わない部屋は埃がたまるし、赤ちゃんがいるので清潔に保っておきたいと、家を綺麗にすることに時間を取られ、なんのために広い家を借りたのか?と、自問自答する日々を過ごします。
そんなわけで「家は、小さければ小さいほど良い。」というのがこの時に学んだ教訓です。もう一生広い家には絶対住みたくないと、心に誓いました。
このようなわけで、夫婦二人の暮らしで良かれと思って選択したモノ・コトが、こどもが生まれることで重くのしかかるという経験をすることになります。自分の時間がなくなるのはもちろん、こどもの成長に伴って、新しく生まれ増え続ける家事を、1日の中でうまく回すのに奔走する日々。”自分の時間”という、家のことでもない・仕事でもない・赤ちゃんのことでもない時間を作り出すのは不可能でした。
子育てと仕事の両立に挫折・・・
朝ごはんの支度、お昼ご飯の支度、夜ご飯の支度。
お買い物・洗濯・(手が回れば掃除)・オムツの交換・お風呂入れ・仕事。
奥さんは、数時間おきにくる授乳。奥さんも少しずつ普段通りの生活ができればと、食事・掃除や洗濯、家事をしようとしますが、授乳の時間がやってきますし、体力が追いついて来ません。赤ちゃんの体が大きくなってくることで、少しずつ授乳のサイクルも短くなってくるので、授乳の合間は寝る時間です。夫婦二人だけでの子育て(孤育て)は、想像以上に過酷なものでした。
店長の家は、周りにサポートを受けられる親族がまったくいなかったため、完全孤立。
最近はママをサポートできる地域のサービスも増えて来ました。きっと我が家以外でも、完全孤立で子育てをしている家庭は多いと思います。そんな時は、地域の子育てサービスを受けるのはとってもおすすめです。
そんなわけで仕事の時間をどんどん失い、たどり着いたところは「主夫」です。
で、奥さんも子育てとできる家事への復帰ということで「主婦」。
主夫と主婦による、子育てが完成です。新しい子育ての形、最先端!!(笑)
誰も仕事してません。
この頃店長は、「主夫」もやっていけそうだなと何気に自信を持ち始めていたのですが、家には「主婦」がいるので、このまま「主夫」を続けたら、家計が破綻するな…と、我に返ってすぐに気づくことになります。
赤ちゃんの成長に伴って、この時期は出費もかさむんですよね。
誰が見ても、上手くいかないだろうなと感じると思います。
仕事ができない!時間の大切さに気づく
ここまで読むとわかる通りで、仕事をする時間を見つけるのが難しい状態が続きます。
でも、「主夫」と「主婦」の生活では家計が回らないことは明白だったので、仕事の時間を作り出す努力をすることになります。
朝・昼・晩と、日中はどうしてもしなくてはいけない家事が続きます。
少しずつ奥さんが復帰するけれども、毎日それが続くわけではありません。赤ちゃんの様子や具合に左右される毎日。それに、なんといっても睡眠時間はとても大切。離乳食がスタートするまではそんな毎日でした。
ママは、成長してきた赤ちゃんとやっぱりいつも一緒です。家事をしたいけれども、赤ちゃんと離れられないジレンマをこの頃すごくママは感じるようでした。離乳食期に入ると、授乳がないので体力もそれなりに復活するため、そろそろ家のことを目一杯するぞ!となるんだけれど、今度は違うすべきことがこどもの成長に伴って訪れるのです。
休む間もないママの毎日。
結局のところ、そんな中仕事をしていた時間は、夜中の3時〜朝の7時頃まで。
日中・午後はあわせて2〜3時間くらいでしょうか…。
日中はメール&打ち合わせが中心で、深夜の4時間に集中して作業と、割り切って仕事をしてました。
それでも合計8時間の仕事時間を確保(というよりも作り出す)することができました。
寝る時間は、23時頃〜2時と、7時〜9時頃の5時間です。年齢的にも若かったからできたのではないかと思ってます。今、同じことができるかと言われたら自信ありません。でもこの時に、『決められた時間の中でどう仕事を上手くするか』という手応えをつかんだことは、この後の時間の使い方に役立つことになります。
そして、今まで仕事の仕方が悪かったったことにも気づかされました。ワーカーホリック(仕事中毒)は、仕事が忙しいからだと思っていたのですが、仕事の仕方がそうさせていたのでした。子育てという強制的にやってきていつも通りにうまくいかない日々の中で、気づかされることはたくさんありました。
さて、赤ちゃんが生まれた暮らしは、私たち家族にとってはとても大切なことだけれども、世の中(ビジネスの上)では他人様のことでした。
それを強く実感した時でもありました。フリーランスの世界では当たり前ですが、状況に関係なく、いい仕事ができないと、次はありません。そして、時間をかけたからいい仕事が出来るということでもありません。
一つ一つの仕事を大切に、どう向き合うかが問われていると実感しました。それは、法人化をしたことで一時崩れかけたのですが、会社の規模などに関係なく、やっぱり大切なことだと感じています。
ちなみに、離乳食がスタートすると、ガラリと生活が変わります。
授乳がなくなることで、奥さんが朝・昼・晩に復帰となるので、私の仕事時間も飛躍的に増えることにつながりまして、なんとか、家計も破綻せずに乗り越えました。
暮らしも大事だけど、家計を動かしていくにはお金も大事。
この時はシビアにそう思いました。
育児・子育てには、あきらめも大事
育児・子育てに対して全てを完璧にこなそうとすると、仕事も生活もきっとうまくいかなかったでしょう。
正直、何かを諦めなければ生活していくことが困難な状況でした。仕事であれば、期待値の大きな案件・コンペや投資的な案件は全て受けることができませんでしたし、生活で言えば、食材のことを考えたり、奥さんの時間を作ったり、仕事をしていなければできたであろうことをすることはできませんでした。
とっても可愛い赤ちゃんだけれども、毎日毎日の疲労に、苦しく逃げ出して休みたくなる日もありました。
眠い目をこすりながら、オムツ交換。
あまりの疲労に『起きたら、こどもを枕にして寝てしまっていた』のは、我が家では語り継がれる伝説です。
でも、なんだかわからないけれどもこどものためになんでも頑張れたのは、不思議な力です。今同じようなことができるか?と言われたら無理!と言えるんだけど、そんなことをさせてくれる力をくれるのもこどもの力なんだと思います。
自然と訪れた「こどもが主役」な暮らしというよりも「こどもが主役」じゃないと、上手くいかない毎日の暮らし。
そこから見えてきたことは、仕事への向き合い方はもちろん、日々の暮らし方への気づきでした。この大変な時期を乗り越えたことで、自分の中(自分一人の力)で越えられなかった壁を乗り越えた気がしています。なので、大変な時期だったけど、こどものおかげで成長させてもらったと思っています。